ホーム トピックス 【2026年】種苗法改正で「種取り」は違法に?セーフとアウトの境界線を解説

【2026年】種苗法改正で「種取り」は違法に?セーフとアウトの境界線を解説

「種苗法の改正により、自分で種や苗を増やすと違法になる」という情報を目にして、不安を感じている方もいるのではないでしょうか。

実はまさに今(2026年)、国会で新たな種苗法の改正案が審議されており、再び大きな注目を集めています。

今回、国会が急ピッチで動いている背景には、「紅プリンセス」といった日本の最新の超高級かんきつなどが、国への登録審査を待っている「出願段階(審査待ちの期間)」で海外のネットサイトに無断で流出してしまった問題があります。
これまでの法律では、正式に登録される前だと水際で差し止めるのが難しかったため、その抜け穴を大至急ふさごうとしているのです。

このように、今回の改正はあくまで「海外への不正流出対策」や「日本の知的財産を守る」ためのものです。

そのため、農家や家庭菜園の「種取りルール」自体が新しくなるわけではありません。
昔からある「一般品種」の種取りや、家庭菜園の範囲での利用(自家消費)であれば、これまで通り違法にはなりませんので安心してください。

今回は、現在進行形で動いている2026年の最新動向を踏まえながら、農家と家庭菜園それぞれにおいて、どのような行為が法律上「セーフ」で、何が「アウト」になるのか、事実関係を整理して分かりやすく解説します。

【基本】法律が規制する「対象」を知る

まず大前提として、種苗法で規制がかかるのは国に登録されている「登録品種」だけです。

むかしからある品種や在来種、登録期間が切れた品種(コシヒカリなど)はすべて「一般品種」と呼ばれ、今回の改正内容にかかわらず、農家も家庭菜園もこれまで通り自由に種取り・増殖ができます。

一般品種か登録品種かは、作物の種類や品種によって異なります。
特にスーパーやホームセンターで見かける「最新の人気ブランド」は登録品種であることが多いです。

登録品種の例(種取りにルールあり)

  • いちご:とちあいか、あまりん、スカイベリー など
  • ぶどう:シャインマスカット、ルビーロマン など
  • かんきつ:紅プリンセス(出願中)、せとか、新美月 など
  • さつまいも:シルクスイート、紅はるか など
  • お米:ゆめぴりか、つや姫、新之助 など

一般品種の例(自由に種取りしてOK)

  • 定番品種:コシヒカリ(米)、男爵(じゃがいも)、青首大根 など
  • 伝統・在来野菜:加賀野菜、京野菜、九条ねぎ、下仁田ねぎ など
  • おなじみの花:朝顔、ひまわり、一般的なパンジー など

自分が育てようとしている野菜や果物がどちらにあたるのか、まずは正しく確認することが重要です。
なお、品種の登録状況は変更される場合があります。登録品種かどうかは、次の方法で確認できます。

「登録品種」の調べ方

「自分が育てている品種はどっちだろう?」という場合、見分ける方法は主に3つあります。

① パッケージ(ラベル)の表示を見る(一番簡単)

法改正以降、登録品種の種や苗を販売する際には、パッケージへの表示が義務付けられています。袋やラベルに以下のいずれかの表記があるものは「登録品種」です。

  • 「登録品種」または「品種登録第○○○○○号」という文字
  • 「PVP」のマーク(ロゴや文字)

PVPとは「Plant Variety Protection(植物品種保護)」の略で、一言でいうと植物の特許マークのようなものです。
新しい品種を開発した人の権利を守るための世界共通のサインで、「これがある苗や種は、勝手にネットで売ったり知らない人に配ったりしてはいけないサインですよ」という目印になります。
このマークは農林水産省のホームページから自由にダウンロードできます。

農林水産省ホームページ

逆に、これらの表示が見当たらないものは一般品種である可能性が高いです。

ただし、新しく出たばかりの品種で「品種登録出願中」と表示されている場合や、人から苗の状態で譲り受けた場合などは、パッケージだけでは判断できないこともあります。

「自分が育てている品種が登録品種かどうかを正確に確認したい」という場合は、次に紹介する農林水産省のデータベース検索を利用するのがおすすめです。

② 農林水産省の「品種登録データ検索」で調べる

国に正式に登録されているか、あるいは現在出願中であるかを確実に調べたい場合は、農林水産省の公式データベースから検索できます。

農林水産省 品種登録データ検索ページ

こちらの画面では、調べたい「品種の名前」だけでなく、「作物の種類(いちご、りんご等)」や「開発者の名前(自治体や企業名)」など、さまざまな内容から登録品種を探すことができます。

なお、画面最上部にある「出願公表」とは、まだ審査を待っている「現在出願中」の最新品種のことです。正式に登録される前の段階であっても、無断での種取り(自家増殖)は禁止の対象となるため、一緒に検索できるようになっています。

③ 「流通品種データベース」で調べる

「商品名(ブランド名)から手軽に探したい」「種取り(自家増殖)の条件まで一目で知りたい」という場合は、一般社団法人JATAFFが運営するデータベースを使うのが非常に便利です。

流通品種データベース(JATAFF)

トップページの「簡易検索」に、普段呼んでいる名前(例:「あまりん」など)を入れて検索します。検索結果一覧には、以下のように農家にとって最も重要な情報が並んでいます。

  • 品種名 / 商品名: 正式な登録名と、普段使われている商品名の両方が並んで表示されます。
  • 自家増殖の許諾:ここに「必要」や「不可(禁止)」とダイレクトに表示されるため、種取りができるかどうかが一目で判別できます。空欄の場合はまだルールが調整中か情報が未登録の状態です。
  • 育成者権:「有(登録)」か「無(一般)」かが書かれているため、法律の対象かどうかも明確です。有(登録)の場合は法律の対象です。「手続きすれば種取りできる品種」と「一切禁止(不可)の品種」に分かれるため、隣の「自家増殖の許諾」の欄の確認が必要です。「無(一般)」の場合は法律の制限はありません。誰でも自由に種取りすることが可能です。

さらに詳しい情報を知りたい場合は、右端の緑色の「詳細」ボタンを押すと、その品種の権利を持っている開発元(都道府県や企業など)の正式な名前や住所を確認できます。

農家(農業経営者)のセーフ・アウト

農家が自分の畑で栽培するために種や苗を増やす行為は、法律上「自家増殖」と呼ばれます。
2022年の法改正以降ルールが大きく変わっているため注意が必要です。

セーフ

  • 一般品種(登録品種でないもの)を自家増殖する:コシヒカリなどの定番品種や在来種は法律の制限を受けないため、事前の申請や許諾、費用の支払いなどは一切不要で、これまで通り自由に種取り・増殖ができます。
  • 許諾(手続き)を得て自家増殖する:登録品種であっても、開発元(国や自治体、民間企業)に申請し、許諾を得れば次期用の種取り・増殖が可能です。※許諾が「無料」か「有料」かは品種によって異なります。

アウト(違法)

  • 無断で自家増殖する:開発元の許諾を得ずに、登録品種の種を取ったり苗を増やしたりする行為は、たとえ自分の畑のなかだけであっても違法です。2022年の種苗法改正により、農業者の自家増殖は「育成者権者の許諾に基づき行うこと」が原則となりました(改正種苗法の関係規定)。
  • 増やした種や苗を他人に譲渡・販売する:許諾を得て増やした苗であっても、それを他の農家に売ったり、タダであげたりする行為は権利侵害になります。

家庭菜園(趣味・自家消費)のセーフ・アウト

趣味の家庭菜園については、法律の扱いが農家とは全く異なります。
種苗法第21条において、育成者権(開発者の権利)は「個人的又は家庭的利用」には及ばないと明記されているためです。

セーフ

  • 自分で育てるために種を取る・苗を増やす:登録品種であっても、翌年自分が楽しむため、あるいは同居する家族で消費する分には、許諾や手続きなしで自由に種取りや株分けができます。

アウト(違法)

  • メルカリやネットオークションでの販売:たとえ家庭菜園で余った1株であっても、ネットを通じて不特定多数に販売する行為は「業としての利用(商業利用)」とみなされ、完全な違法行為になります。
  • 不特定多数への無償配布:SNSで「欲しい人に種を郵送します」と呼びかけたり、地域のイベントで誰でも持っていけるように苗を配る行為は、お金を取らなくても「家庭的利用」の範囲を超えるためアウトです。
  • 身近な人への「お裾分け」:たとえ無料であっても、同居家族以外の人(別居の親戚や友人)に苗やタネを譲る行為は法律上アウトになります。登録品種を増やして楽しむのは、あくまで「自分の家の中だけ」にとどめましょう。

2026年最新の法改正による影響は?

2026年にも種苗法の一部改正案が国会に提出され、注目を集めています。今回の2026年改正の主な柱は以下の通りです。

  • 開発者の権利(育成者権)の存続期間を10年延長する(草本性植物の登録品種は25年→35年、木本性植物(果樹など)の登録品種は30年→40年)
  • 品種登録を待っている「出願段階」でも、海外への無断輸出を差し止められるようにする

この改正は、あくまで「海外への不正流出対策」や「知的財産の保護」をさらに強めるためのものです。
そのため、農家や家庭菜園における「種取りの基本的なルール(一般品種は自由、登録品種は農家のみ要許諾、家庭菜園は自家消費ならセーフ)」自体に変わりはありません。

まとめ

SNS上では「すべての種取りが全面禁止になった」という極端な噂が流れることもありますが、事実は異なります。
私がこの記事を書こうと思ったのも、SNSで誤った情報を発信している人を見たからです。

私たちが気をつけるべきなのは、「国に登録されている品種について、農家が無断で増殖したり、個人的・家庭的利用の範囲を超えて販売や配布を行ったりしないこと」です。

そして、もう一つ気をつけるべきことは、情報を鵜呑みにしないことです。

今はSNSで誰でも自由に情報を発信できる時代です。発信している当人すら、それが誤りだと気づかずに広めてしまっているケースも少なくありません。

誰かが言ったことや噂をそのまま信じるのではなく、一度立ち止まって、自分で事実を確かめること。
それが、これからの時代に楽しく正しく、農業や家庭菜園を続けていくために一番大切なことかもしれません。

種苗法の改正について(農林水産省 公式)
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/syubyouhou/

種苗法に関するよくある質問・FAQ(農林水産省)
https://www.maff.go.jp/j/kanbo/tizai/brand/syubyo_top/faq.html