ホーム トピックス 日本の農業の未来|今の課題とこれからを考える

日本の農業の未来|今の課題とこれからを考える

日本の農業はいま、どこへ向かっているの?

農業従事者の減少、大規模化の波、環境への問い、そして消費者と農家の新しい関係。
日本の農業はいま、かつてないほど大きな転換期を迎えています。

この記事では、農業の現状と構造的な変化を読み解きながら、私たちにとっての農業の未来を考えます。

日本農業が抱える問題

日本の農業はいま、深刻な課題に直面しています。
担い手の減少、獣害の拡大、環境への負荷。これらは個別の問題ではなく、互いに絡み合いながら農業の現場を圧迫しています。

担い手が減っている

日本の基幹的農業従事者は、2024年時点で約111万人。
2020年の約136万人からわずか4年で約25万人減少し、平均年齢は69歳を超えています。
若い世代で農業を始める人も一定数いますが、やめる人の数には遠く及ばず、減少の流れは止まっていません。
さらに問題なのは、地域によって担い手の偏在が生じていることです。

大規模化が進む地域がある一方で、担い手が完全に消えていく地域も出てきています。
この格差は今後さらに広がる可能性があります。

獣害が深刻化している

担い手が減り、管理されなくなった農地や山林では、イノシシ・シカ・クマなどによる獣害が拡大しています。
農林水産省によると、野生鳥獣による農作物被害額は令和6年度で約188億円にのぼり、前年度からさらに増加しています。

農作物への被害だけでなく、人里への出没も増えており、農村の安全や生活環境にまで影響が及んでいます。
耕作放棄地が増えるほど獣害が拡大し、獣害が拡大するほど農業をやめる人が増える。この悪循環が各地で起きています。

農業と環境の関係が問い直されている

化学肥料や農薬の使用による土壌・水・生態系への負荷、温室効果ガスの排出など、農業が環境に与える影響も無視できません。
一方で、農業は環境を守る側面も持っています。

農地や里山が適切に管理されることで、生態系が保たれ、水源が守られます。
担い手が減り農地が荒れることは、食料生産の問題であると同時に、環境問題でもあります。

食料自給率はカロリーベースで38%と低い水準が続いており、「誰が、どうやって日本の食を支えるのか」という問いは、もはや農家だけの問題ではありません。

こうした課題が重なる中で、農業の現場は今、さまざまな方向へ変わろうとしています。

大規模化が進む背景と、その限界

担い手不足への対応として、まず広がっているのが大規模化です。

ドローンによる農薬散布、AIによる生育予測、ロボットによる収穫・選別。
こうしたスマート農業は、少ない人手で広い農地を管理することを可能にし、食料の安定供給を支える役割を担っています。

しかし大規模化には限界もあります。
日本の農地は中山間地が多く、大型機械が入れない場所も少なくありません。

また農地の集約が進む一方で、集約から漏れた農地が耕作放棄地になるリスクも高まっています。
大規模化は解決策のひとつですが、それだけで農業全体を支えることはできません。

小規模農業の必要性と現実

地域の食を守り、農村の風景を維持し、消費者と顔の見える関係を築く。そうした役割は、地域に根ざした小規模農業にしか担えない部分があります。
小規模農業は、多様性や地域とのつながりを守る存在として社会的に重要な意味を持っています。しかし現実には、生産コストに対して販売価格が伸びにくく、販路の確保や後継者づくりも容易ではありません。

この課題に対して、直売所やオンライン販売、農業体験やワークショップを通じて消費者と直接つながる農家さんが増えています。小規模農業の持続可能性は、いかに消費者との関係を築けるかにかかっている部分が大きくなっています。

農業の未来は「多様化」の中にある

大規模か小規模か。慣行農業か有機農業か。
農業の未来をこうした二項対立で語ることには限界があります。

精密農業で環境負荷を抑えながら生産性を上げる経営体、有機資材を取り入れながら規模を拡大する法人、消費者との関係を軸に独自のブランドを築く個人農家。
こうした多様な実践が広がることこそが、日本農業の可能性です。

農業の未来は一つの正解に向かって進むのではなく、多様なかたちが共存しながら進んでいく。
それが現実に最も近い見方ではないでしょうか。

大規模農業と小規模農業、それぞれの支え方

大規模農業は、資金力と技術力を背景に、食料の安定供給という社会的な役割を担っています。スマート農業への投資や規模の拡大によって、少ない人手でも農業を続けられる仕組みを自ら作ることができます。

一方、小規模農業が持続するためには、地域や消費者との支え合いが欠かせません。農家さんから直接作物を買う、イベントやワークショップに参加する。そうした一人ひとりの関わりが、小規模農業を成り立たせる力になります。農業の未来は、農家さんだけでなく、食べる側の私たちの行動にもかかっているのです。

農家さんを知ることが、最初の一歩

一人の農家さんの話を聞く、その人が作ったものを食べてみる。
それだけで、農業との距離はぐっと縮まります。農業の未来は、こうした小さなつながりの積み重ねの中にもあります。

ノカノワでは、地域に根ざしてそれぞれのスタイルで農業を実践する農家さんたちを紹介しています。
現場で向き合う人たちのストーリーをぜひ読んでみてください。

農林水産省「令和6年農業構造動態調査結果」(2024年)
https://www.maff.go.jp/j/tokei/sihyo/data/08.html

農林水産省「令和6年度食料・農業・農村白書」第2章第3節
https://www.maff.go.jp/j/wpaper/w_maff/r6/r6_h/trend/part1/chap3/c3_3_00.html

農林水産省「全国の野生鳥獣による農作物被害状況について(令和6年度)」
https://www.maff.go.jp/j/seisan/tyozyu/higai/hogai_zyoukyou/index.html

農林水産省「令和6年度食料自給率」
https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/zikyu_ritu/012.html