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京都・亀岡でニホンミツバチと暮らす。HATISUKEさんが届ける「自然に寄り添う養蜂」

京都府亀岡市でニホンミツバチの養蜂を行うHATISUKE(八助)さんを訪ねました。

自然豊かな環境で、一年に一度だけ採蜜する希少なニホンミツバチのはちみつを生産しているHATISUKEの岡野春菜さん。

今回は養蜂場を案内していただきながら、ニホンミツバチや養蜂に関するお話を伺いました。

クマの被害を乗り越え、続くニホンミツバチとの暮らし

最初に案内していただいたのは、現在養蜂を行っている養蜂場です。

岡野さんは2019年からニホンミツバチの養蜂を始め、はちみつの生産・販売を続けています。

しかし2024年、それまで使用していた養蜂場がクマの被害に遭い、巣箱は壊されてしまいました。

現在は知り合いの土地の一角を借り、新たな場所で養蜂を続けていますが、この日、伺った場所でミツバチが入っていたのは4つある巣箱のうちの1箱だけ。
ほかの巣箱では分蜂が繰り返し起こり、群れが絶えてしまったそうです。

分蜂とは、女王蜂が働き蜂の多くを連れて新しい住処へ旅立つ自然な営みのことです。
残された巣では新しい女王蜂が育ちますが、うまくいかなければ群れは絶えてしまいます。

ニホンミツバチと向き合う養蜂

「餌も薬もあげません」

養蜂について伺う中で、岡野さんはそう答えてくれました。

一般的な養蜂では、給餌をしたり、病気やダニの対策を行ったりと、人が細かく管理しながらミツバチを育てます。
しかし岡野さんは、ミツバチ本来の力を大切にし、餌や薬剤に頼らない養蜂を実践しています。

岡野さんが行うのは、過ごしやすい場所へ巣箱を設置したり、巣箱の掃除をしたりする程度。
必要以上に手を加えず、ミツバチが本来持つ力を発揮できる環境を整えることを大切にしています。

また、養蜂では害虫とされることも多いスムシについても、

「スムシはお掃除屋さんでもあるんですよ」

と話してくれました。

ただ完全に放置するわけではなく、ミツバチの群れが弱ければスムシが増えすぎてしまうため、見つけたときは取り除くそうです。

しかし、徹底して排除するのではなく、ミツバチが元気な群れを維持できる環境を整えることが何より大切だと話されていました。

岡野さんが日々向き合っているのは、ミツバチを管理することではなく、ミツバチが本来の力を発揮できる環境を整えることでした。

在来種だからこそできる養蜂

こうした養蜂ができるのは、ニホンミツバチが日本の自然環境に適応してきた在来種だからでもあります。

外来種であるセイヨウミツバチは、日本の環境では病気やダニへの対策が欠かせず、スズメバチへの対抗手段もありません。

一方、ニホンミツバチは互いにグルーミングをしてダニを落としたり、集団でスズメバチを取り囲んで撃退したりと、自ら身を守る力を備えています。

こうした本来の姿を見守り、その力を引き出す環境を整えることが、岡野さんの養蜂のやり方です。

これだけを聞くと、「ニホンミツバチの養蜂って手間がかからなくて簡単そう」と思う方もいるかもしれませんが、それは全く違います。

日本でも養蜂といえば、セイヨウミツバチが主流です。
その大きな理由は、ニホンミツバチよりもセイヨウミツバチの方が圧倒的に飼いやすいからです。

セイヨウミツバチは、人が管理しやすいよう長年飼育されてきたことから、「家畜」と表現されることもあり、適切に管理をすることで、比較的安定した採蜜が可能です。

一方、ニホンミツバチはいくら世話をしても、環境が気に入らなければ巣箱を離れてしまいます。

こうした理由から、日本の養蜂ではセイヨウミツバチが広く飼育されています。

今は果樹園と家庭菜園になっている養蜂場へ

続いて案内していただいたのは、2024年にクマの被害に遭うまで養蜂を行っていた場所です。

山間にあるこの場所は800坪ぐらいの広さがあり、もとは竹藪だったのですが、ご家族で少しずつ開墾し、現在の姿になったそうです。

そこには栗や銀杏、山椒、レモンなど、たくさんの果樹の木々が並び、一角では家庭菜園用の野菜も育てられていました。

環境やミツバチへの影響を考え、農薬は一切使用していないそうです。

興味深かったのは、ニホンミツバチは畑の野菜の花よりも、その先に広がる山へ蜜を集めに行くというお話でした。

養蜂場のすぐ奥には山が広がっており、ニホンミツバチにとって理想的な環境であることがよく分かりました。

ここでは現在は養蜂はされていませんでしたが、空の巣箱は残ったままでした。

「あっ、ニホンミツバチ!」

と岡野さんに言われ、急いでカメラを向けました。

地面の近くに咲く小さな花に、小さなミツバチが飛び回っていてとてもかわいかったです。

岡野さんは「できればまたこの場所で養蜂をしたい」と話されていました。
しかし、クマが出没する状況では、実現は簡単ではありません。

自然と人との境界について

取材後には、養蜂場のさらに山手にある愛宕神社にも足を運びました。

ムササビの生息地にもなっているほど自然が豊かでとても素敵な場所でしたが、一方でクマが現れても不思議ではないと感じる環境でした。

しかし岡野さんによると、この地域でクマが現れるようになったのは二年前からだそうです。
山で餌を探すよりも、人里で食べ物を得るほうが効率がよいことを覚えてしまったのではないか、と話してくれました。

各地で農家さんを取材していると、「自然と人里との境界が曖昧になってきている」という話を耳にすることが少なくありません。
今回伺ったクマ被害の話も、その現実を改めて考えさせられる出来事でした。

ニホンミツバチを守りたい

取材を通じて、岡野さんが一貫して話されていたのは「ニホンミツバチとニホンミツバチが暮らしていける自然を守りたい」という想いでした。

かつては日本各地で当たり前のように見られたニホンミツバチも、その数は年々減少し、今では「幻のはちみつ」と呼ばれるほど希少な存在になっています。

岡野さんは、はちみつの販売だけでなく、ワークショップなどを通してその魅力を伝える活動にも取り組まれています。

HATISUKEさんの詳細情報や、こだわり、岡野さんへのインタビューなどは、紹介ページに記載しています。
興味を持っていただけた方は、ぜひそちらも合わせてご覧ください。

おまけ

今回、岡野さんのご好意でニホンミツバチの巣箱の中を動画で撮影させていただきました。

このように巣箱の下からスマホを入れて撮影しています。

かなり貴重な映像ですが、たくさんのミツバチが出てきます。

苦手な方は再生ボタンを押さないように気をつけてください。